30 October 2025

NYISOの系統連系キュー改革がBESS開発にもたらす影響とは

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NYISOの系統連系キュー改革がBESS開発にもたらす影響とは

​ニューヨーク独立系統運用者(NYISO)は、系統連系キューの大幅な見直しを進めています。2023年1月より、NYISOは従来の逐次審査方式から、膨れ上がったキューを解消し、期間短縮を目指す2段階のクラスター方式へ移行しました。

最初のクラスターは2024年8月に開始され、初期データによると開発者はキューをより迅速に進めていることが示されています。

主なポイント

  1. クラスター方式。 NYISOは「先着順・逐次審査」から「クラスター・スタディ」制度に変更しました。規制当局は、クラスター締切前に要件を満たした開発案件をまとめて審査します。
  2. タイミングが重要。 クラスター期間を逃すと、次のサイクルまで進行が停止し、バッテリープロジェクトは他案件の後ろに回されます。キューのウィンドウは連続しているため、前の審査が終わるまで新規申請は受け付けられません。連続サイクルでは全体の処理時間短縮につながりますが、申請遅延が商業運転開始を最大2年遅らせることもあります。
  3. 高額なデポジットで投機抑制。 10万~25万ドルの調査デポジットが、より成熟した申請を促し、離脱率を下げます。

​この改革が蓄電池に与える意味

NYISOの改革は、準備状況・規模・財務力を重視した、より明確な連系ルートを提供します。

  • 連系までが迅速。 提案から運転開始までの期間が短縮され、従来数年かかっていた待機期間を削減します。
  • 参入障壁の上昇。 規模や資金力のある大手開発者が有利となり、小規模事業者にはより高いハードルとなります。
  • 見通しの向上。 共同調査や明確なマイルストーンにより、早期段階で実現性の判断がしやすくなります。
  • パイプラインの強化。 キューが投機的プロジェクトをふるい落とし、全体の質と投資家の信頼性を高めます。

​1. 新たな連系プロセスでクラスター案件の待機期間が短縮へ

NYISOのバックログは2018年の176件から2025年には350件へと倍増し、全米的なプロジェクト長期化の傾向を反映しています。

この急増を受け、連邦エネルギー規制委員会(FERC)はOrder No. 2023を発令し、系統運用者に連系手続きの改革を義務付けました。

その結果、NYISOはPJM同様、2023年1月以降の全プロジェクトにバッチ処理方式を導入。従来5年以上かかっていた連系申請から商業運転までの期間短縮を目指しています。


​2. 蓄電池が連系キューの主役に

キューは現在、「ファストトラック」(成熟し既存枠を持つ案件)と、「クラスター・スタディ」(第1バッチ)の2つのトラックに分かれています。

「ファストトラック」案件は連系契約交渉中もしくは建設中で、2030年以前の商業運転開始(COD)を目指しています。

クラスター・スタディ案件はプロセス初期段階で、システム影響調査待ち。COD目標は2027~2032年で、おおむね3~8年キューに留まる見込みです。

これまでにNYISOキューを通過したBESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)案件は、合計100MWの5件のみ。しかし、ホークル州知事の2030年までに6GW蓄電池導入目標に向け、市場は急拡大する見通しです。

両トラックとも蓄電池が主流で、ファストトラックに2GW超、クラスター初期段階に約18GWが並びます。離脱案件も出ますが、蓄電池は現時点で全体の57%を占めます。ただし、案件がキューに数年滞留することも多く、最終的に運転開始に至るのは全体の約9%です。

インデックス・ストレージ・クレジット(ISC)制度や、バッテリー建設コスト(CapEx)の低下など、最近のインセンティブが申請急増を後押ししています。


​3. BESS案件の立地と規模は?

4時間型バッテリーが申請の主流で、開発者は案件ごとの内部収益率(IRR)最大化を狙っています。

一方、一部の開発者は10時間型システムも提案し、容量認定の向上や容量・補助サービス市場での価値拡大を目指しています。

10時間型BESSを持つ開発者は、需要の高いエリア(ニューヨーク市など)で最大95%高い容量支払いを得ることができます。したがって、10時間型BESSは年間200万ドル以上の追加収入も期待できます。

申請はニューヨーク市やロングアイランドに集中し、高需要・高予備力ニーズのある地域がバッテリープロジェクトの有望地となっています。ニューヨーク州北部は発電量が豊富で予備力需要が低いため、バッテリー開発は限定的です。


​4. 開発者にとっての改革の意義

新方式では、2024年第3四半期にキュー入りした案件は2026年6月までに着工見込みで、従来より約50%早くなります。

​初回調査段階のプロジェクトは、以下の流れで進行します:

1. 申請・確認(2024年8月~9月)

クラスター調査デポジット(下記参照)と返金不可の申請料を顧客エンゲージメント期間前に支払います。金額は定格容量に応じて変動し、クラスター枠確保のため事前に納付が必要です。大規模案件ほどデポジットは高額となり、準備状況や共同調査費用の裏付けとなります。

2. 顧客エンゲージメント期間(2024年9月~2025年6月)

NYISOと開発者がプロジェクト設計を調整します。開発者は申請とデポジットを提出し、NYISOは新たな物理的非実現性テストを含む技術的な準備状況を審査します。

3. クラスター調査段階(2024年9月~2026年4月)

エンゲージメント期間後は変更が限定的となり、案件は並列で調査され、系統増強やグリッドへの影響が評価されます。また、NYISOは安全性や容量拡大との整合性も確認します。なお、離脱時には調査デポジットの20%がペナルティとなり、遅い段階での離脱コストが上昇し、離脱抑制につながります。

4. イテレーティブ意思決定期間(2026年4月~着工)

最終交渉を経て連系契約を締結し、建設開始となります。案件はキューを離れ、商業運転に向かいます。


​5. フィールドの選別

新たな仕組みは、投機的な案件を排除し、参加者の質を高めます。プロセス途中での内容変更は禁止され、早期の周到な準備が報われ、より高い初期費用が投機的申請を抑制します。これにより、残る案件の予測性が向上します。

調査デポジット

​NYISOは申請時にスタッフコストを賄うための調査デポジットを義務付けました。手数料は案件規模で変動し、小規模(80MW未満)は10万ドル、大規模は最大25万ドル。なお、これらのデポジットは全体コストの一部に過ぎず、最適なシステム規模には影響しません。


まとめ:クラスター改革は準備とタイミングを重視

NYISOは1件ずつの連系審査からクラスター方式に移行し、審査の迅速化とバックログ解消が期待されます。

このため、クラスター期間を逃すと数年の遅延につながり、事前準備とタイミングの重要性が増しています。同時に、調査デポジットの高額化が投機的申請を抑え、財務・技術的に準備の整った開発者が恩恵を受けます。

最終的には、より小規模で信頼性の高いパイプライン、投資家の信頼向上、市場全体の予見性向上につながります。したがって、早期に行動しクラスター期間に合わせて計画する開発者が最大の価値を享受できるでしょう。

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