14 July 2021

イギリスにおける蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)導入の将来展望

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イギリスにおける蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)導入の将来展望

はじめに

本レポートでは、2024年末までのイギリス(GB)における蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)の導入見通しをまとめています。私たちはボトムアップ方式を採用し、複数のデータソースを考慮してプロジェクトリストを作成しました。これらのデータソースには、容量市場レジスター、再生可能エネルギー計画データベース(REPD)、企業が提供する文献情報などが含まれます。これらの情報をもとに、各サイトを手作業で精査し、可能な限り主要な変数(規模、開発者、運転開始日など)を特定しました。

イギリスにおけるBESSの現状

図1は、2014年から2021年第2四半期までのイギリスにおけるBESS容量の四半期ごとの導入状況を示しています。2021年に稼働を開始した各サイトは表1に掲載されています。

図1 - 2014年第1四半期から2021年第2四半期までのイギリスBESS導入状況。
表1 - 2021年に新たに導入されたイギリスの蓄電池エネルギー貯蔵容量。
  • 2021年には192MWの容量が導入され、2021年第2四半期時点で合計1261MWとなりました。
  • MinetyとOxford Superhubは2021年6月に稼働を開始し、イギリス最大級のBESSとなっています。

図2は、2021年7月時点での所有者別のイギリスBESS全体の市場シェアを示しています。

図2 - 所有者別イギリスBESSのシェア。
  • Gresham Houseはイギリスで最大のBESSオーナー(導入容量ベース)であり、合計409MWのポートフォリオを保有しています。
  • イギリスではBESSの所有権が集約傾向にあり、68資産のうち26件をGresham HouseとGore Street Capitalが所有しています。

イギリスBESSの今後の展望

図3は、イギリスにおける四半期ごとの将来の容量導入見通しを示しています。

図3 - イギリスBESS容量の将来展望。
  • 2023年までにイギリスのBESS導入容量は、揚水発電など他の蓄電技術を上回り、蓄電池が主流の貯蔵技術となると予想しています。
  • 現在進行中のプロジェクトのうち67%が、2021年から2024年までの容量市場契約を獲得しています。
  • 2021年7月から2024年までに、イギリスのBESS容量は2524MW増加すると分析しています。

図4は、定格出力別のBESSサイト数を2021年7月時点と2024年で比較しています。

図4 - 定格出力別イギリスBESSサイト数。
  • 2021年7月から2024年の間で、平均サイト容量は18.2MWから33MWへと81%増加しています。
  • 英国の計画法改正により、50MW超の設備は国家計画手続きを経ずに建設可能となり、今後のBESSプロジェクトの大容量化を後押ししています。
  • 2024年には100MW超のサイトが3件稼働開始予定です。

将来の周波数応答市場

図5は、2021年から2024年までのイギリスにおけるBESS導入容量と周波数応答サービス需要を示しています。このグラフ作成にあたり、以下の前提を置いています:

  • Dynamic Moderation(DM)およびDynamic Regulation(DR)の調達目標は、NG ESOの2021年5月ウェビナーFAQに従い、Dynamic Containment(DC)の40%と仮定。
  • DC調達目標は2021年を基準とし、毎年同水準で繰り返されると仮定。
  • Firm Frequency Response(FFR)は2022年3月までに段階的に廃止予定。
  • DC、DM、DRの調達目標は加算的であり、積み上げに関する具体的なガイダンスは現在も協議中です。
図5 - 2021年から2024年までの周波数応答サービスの調達見込み量。
  • 2021年第4四半期には周波数応答市場が飽和し、冬季のDC調達目標が低下することで、現在の£17/Mw/hよりも価格が下がると予想しています。
  • 2022年第2四半期に新サービスが開始され、需要が供給量に近づく見込みです。
  • バッテリーは高速応答が求められるDCおよびDMで主導的役割を果たすと考えられます。DRについては、より高いエネルギーサイクルが必要となることや、発電資産との競争が激化するため、バッテリーの参入は不透明です。

イギリスBESS将来プロジェクト一覧

表2は、今後2024年までに運転開始が予定されている全サイトの一覧です。

表2 - イギリスにおける今後のBESS資産の見通し
* バッテリーは1時間持続を想定。

付録:本調査について

本調査の進め方

表2に掲載された各資産は個別に調査され、イギリスBESS容量の将来導入見通しに関する独自でデータ豊富な調査レポートとしてまとめました。

  • 2021年から2024年のデリバリーイヤーにおける容量市場(CM)契約をすべて精査し、DSRなど他技術区分で登録されたバッテリー資産も含めています。
  • また、CM契約のない資産も調査対象とし、REPDやニュース記事、BESSプロジェクト開発企業が提供する年次報告書など公開情報を活用しました。
  • 情報が得られない場合は概算を用いており、CM契約を取得したバッテリーの最も遅い運転開始日を採用したケースもあります。

さらに詳しく知りたい方へ

本調査レポートはModoのリサーチチームに所属するマーケットアナリスト、Imrith Sanghaが執筆しました。ご質問や詳細については、メール(team@modo.energy)までお気軽にお問い合わせください。