データセンター:テキサスの負荷成長を制限するガスタービン不足の可能性
2025年4月、ERCOTは将来の負荷成長見通しを修正し、2035年までにデータセンターによるピーク需要が35GWに達すると予測しました。これは現在のシステムピークのほぼ半分に相当します。
この変化は全米の電力システムに影響を与える波の一部です。テクノロジー大手企業が、安価な電力供給と広大な土地を求めてテキサスに集まり、大規模データセンターを次々と建設しています。
しかし、電力システムへの接続の現実が成長の制約要因となる可能性があります。
実際にどれほど速く成長できるのでしょうか?
本レポートの分析は無料でご覧いただけます。内容は以下の通りです:
- テキサスにおけるデータセンター成長予測
- 上院法案6号(Senate Bill 6)- テキサスの大規模負荷接続に関する法規の概要
- なぜガスタービンの世界的な不足がデータセンター建設を制限するのかの分析
- エネルギー開発者にとっての新たなビジネスチャンス
本記事の内容についてご質問がある場合は、米国リサーチチームのovais@modoenergy.comまでご連絡ください。
重要ポイント:テキサスのデータセンター成長はERCOTの予測を下回る見込み
テキサスにおけるデータセンターの成長は、サイトが電力を利用できるスピードによって制限されます。
土地へのアクセスや冷却用の水の確保、半導体の安定供給など他の要因も建設のペースを遅らせる可能性はありますが、主な制約要因にはなりません。
テキサスでは、現地発電設備の不足がデータセンター建設を2035年までに44GWに制限すると予想されています。
つまり、建設は予想より時間がかかり、今後10年以内に目標に届かない可能性があります。
3つの理由から建設規模は予測を下回ると考えられます:
- テキサス上院法案6号は、24時間365日の稼働を確保するため、プロジェクトに自家発電を事実上義務付けています。
- 自家発電要件を満たすためのガスタービンが不足しており、データセンターの稼働開始数とスピードの両方を制限します。
- 2025年第2四半期時点のデータセンターのプレスリリースは、ERCOT予測の最初の3年間に見合う確かな計画を示していません。
1. テキサス上院法案6号がデータセンターに自家発電を促す
2025年6月20日、テキサス州の上院法案6号(SB 6)が、米国で初めて大規模電力負荷(75MW以上)の接続管理の枠組みを制定しました。
新設データセンターには法定の「キルスイッチ」が必要となり、ウィンターストーム・ユーリのような事態では電力消費を抑えることが求められます。
しかし大規模AIサイトは、年間ダウンタイムをわずか5分以内に抑える99.999%の稼働率を目指しているため、負荷削減時にも対応できるバックアップ発電設備の導入を進めています。
開発業者は接続プロセスの不確実性を回避し、迅速な稼働を目指しています。
最も迅速かつ長期的な稼働要件を満たす解決策は、ガスタービンによるオフグリッド運用です。
このため、データセンター開発者は稼働要件を満たし、安定したグリッド接続までの橋渡しとしてガスタービンの調達を進めています。
ERCOTの予測の大部分はこれらのメガサイトに基づいており、タービンへのアクセスが成長の制約要因となるでしょう。
2. ガスタービン不足がデータセンター展開を制限
世界のガスタービン供給の70%以上は、GE Vernova、Siemens Energy、三菱パワーの3社が担っています。
世界的なガス発電所建設の減速、特にCOVID-19パンデミック期間中に、これら3社のタービン販売は減少していました。
しかし2024年には、世界的な電化の進展により新たな発電所建設が始まり、タービン需要が再び増加しました。
その結果、大手メーカーによる発電所向けタービン販売が急増しています。
データセンターによるタービン確保の動きは、この流れに遅れて参入しています。
メーカーは生産を増やしているものの、過剰な受注には慎重です。
そのため、新たなタービンの納期は最低でも3年待ちとなっており、タービン確保を目指すプロジェクトは2028年まで待つ必要があります。
GE Vernovaの2024年第1四半期決算説明会(4月23日)で、CEOのScott Strazik氏は「2026年と2027年の納品枠はほぼ完売」と述べ、現時点でデータセンター向けの受注は「ごくわずか」と明かしています。
こうした世界的な供給動向はテキサスのデータセンター展開にどう影響するのでしょうか?
ガスタービンの世界供給量は、2025年の27GWから2027年には42GW超まで増加すると見込まれています(GE Vernovaの拡大ペースを前提)。
ガスタービン供給チェーンの60%が米国向けであり、2027年以降はその1/3がデータセンター向けに割り当てられる見込みです。
この数字を基に試算すると、2028年に米国のデータセンター向けに利用可能なガスタービンは最大11.4GWとなります(既存注文分を除く)。
テキサスの開発業者がこのうち半分強を確保できれば、ERCOT管内のデータセンター向けには年間約6GWのタービン容量が見込まれます。
3. ボトムアップ:データセンター発表は予測を下回る
公開発表を集計すると、新たなハイパースケールとキャンパスによって17GWの容量がテキサス州に導入される計画が明らかになっています。
この成長にもかかわらず、報告された容量はERCOTの2029年までの予測の2/5にとどまります。
この数値を基にS字カーブ成長を外挿すると、2035年には期待される57GWの定格容量のうち25GWにとどまる可能性があります。
なぜ発表内容とERCOTの見解にこれほど差があるのでしょうか?
一因として、プロジェクトが非公開で進行しており、系統計画者だけが接続意向を把握している場合があります。最近のプロジェクトでは、発表から稼働開始まで最短18か月というケースもあり、この差を埋めているのかもしれません。
または、開発業者がERCOTの数字を水増ししている可能性もあります。開発業者が州内で複数の仮申請や重複申請を行い、どこかで接続を確保しようとするのは一般的です。特に開発初期段階では、接続意向表明のコストが低いためです。
将来は不透明だが、データセンター建設は予想より低調になる兆候
ガスタービン供給の問題が引き続きデータセンター建設の制約要因となる場合、システムオペレーターの見通しよりも遅延し、規模も縮小した推移が見込まれます。
すでに電源を確保したプロジェクトは今後3年以内に稼働開始が見込まれますが、その容量は10GWを超えないと予想されます。
2028年以降に新たなタービンの予約が現実化すれば、開発業者は2030年代初頭まで毎年6GWのデータセンター容量を追加できるでしょう。
一部プロジェクトが計画から外れることもあり、全体の建設規模は2035年までに44GW、ERCOT予測より24%低い水準になる見通しです。
既存開発業者へのチャンス:データセンターは併設発電にプレミアムを支払う
SB 6の影響で、データセンターは発電所と併設する動きが進んでいますが、ガスタービン不足によって自前での建設スピードが制限されています。これは既存の市場参加者にとって好機となります。
既存および近く稼働予定の発電事業者は、データセンターと併設契約を締結することで、電力供給要件を満たし、早期稼働を支援できます。
これらの併設契約により、新設データセンターは共通の接続ポイントを持つ発電所の隣に立地し、発電事業者は:
- データセンターに直接電力を販売でき、PPA(電力購入契約)として卸売市場より高いプレミアムを得る可能性があります。
- また、グリッドからの電力引き出しを相殺し、データセンターの信頼性を高めます。
計画中のプロジェクトを持つ開発業者にとって、併設型戦略は有力な選択肢となります。
この分野で注目される発表のひとつが、2024年12月に発表されたGoogleとIntersect Powerの協業です。
今後数年で最も成果を上げる開発業者は、AIブームを支えるこうした併設型ソリューションを提供できる企業となるでしょう。
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