オーストラリアの全国電力市場(NEM)は、世界でも有数の電力価格変動の大きさを誇ります。価格はわずか1時間で市場の最低価格から上限価格まで急騰することもあります。そのため、NEMの市場参加者(特にバッテリーエネルギー貯蔵システムのようなピーキング資産)は、極端な価格から多くの収益を得ています。
NEMの市場構造はこうした変動性を許容しています。NEMはエネルギーのみの市場であり、市場の変動性を低減する容量市場が存在しません。5分ごとの決済と高い価格上限(17,500ドル/MWh、2025年7月1日には20,300ドル/MWhに引き上げ予定)も、高い市場変動をもたらす要因です。
価格変動の根本的な要因を理解することは、極端な価格による潜在的な収益を獲得する鍵となります。本レポートではNEMの価格変動とその根本要因を分析します。その分析をもとに、変動性からの収益最大化に向けた推奨事項をまとめています。
エグゼクティブサマリー
- 極端な価格イベントは大きな収益機会となります。2022年1月から2025年4月までに、最大565,000ドル/MWのエネルギー取引収益が極端な価格イベントから得られました。
- バッテリーのようなディスパッチ可能資産は、極端な価格イベントを主要な収益源としています。特にクイーンズランド州やニューサウスウェールズ州で顕著です。
- 送電制約や停電は、極端な電力価格の主な要因です。これは州間連系線や、同一州内の異なる地域を結ぶ送電線の両方に当てはまります。
- オペレーターは送電線の状況を常に監視し、価格急騰に迅速に対応できるようにするべきです。
- 送電制約による価格変動が起こりやすい地域は、マーチャント戦略で収益最大化を目指す開発者にとって大きな可能性を秘めています。
NEM市場参加者は極端な価格イベントから大きな潜在収益を得られる
本レポートでは、3,000ドル/MWhを超える価格を極端な価格と定義しています。この閾値を超えると、顕著な収益機会が生まれます。2022年1月から2025年4月の間に、極端な価格によるエネルギー取引収益は、ビクトリア州で156,000ドル/MW(年間47,000ドル/MW)からクイーンズランド州で593,000ドル/MW(年間178,000ドル/MW)まで幅がありました。




