10 January 2025

2024年12月:英国バッテリー蓄電市場の最新動向まとめ

2024年12月:英国バッテリー蓄電市場の最新動向まとめ

2024年の締めくくりとなる12月、イギリスのバッテリー蓄電分野では重要なアップデートがありました。NESOによる新サービス「クイックリザーブ」が開始され、バッテリーの収益増加と市場機会の拡大につながりました。

リチウム価格の下落や設備投資(Capex)低下が増設(オーグメンテーション)に与える影響も調査しました。キャパシティマーケットの予備資格審査結果から最終オークションの動向も見えてきました。そして、年初は過去最低だった収益が、年末には2年ぶりの高水準である£84k/MW/年に到達しました。

12月のまとめ

クイックリザーブがバッテリー収益を押し上げ

NESOの新しいクイックリザーブサービスは12月初旬に開始されました。初回オークションには36台のバッテリーが参加し、全受入容量の95%を獲得。一部の先行バッテリーはこのサービスで£94k/MW/年もの収益を得ました。

3月のバランシングリザーブ初日と同様、クリア価格は£0〜£26.63/MW/hと変動が大きく、平均は正方向サービスで£10.91/MW/h、負方向では£6.32/MW/hでした。

12月にはこのサービス導入により、バッテリーリザーブ量が平均160MWから580MWへ大幅増加。卸価格のスプレッド拡大も相まって、リザーブ収益は£1k/MW/年から£11k/MW/年に伸長しました。

クイックリザーブ初日の詳細はこちらの記事でご覧いただけます。

サービス全体の12月の実績についてはこちらをご参照ください。

増設は新設より高いリターンをもたらす可能性

1時間システムにさらに1時間分の容量を追加するコストは、同規模の新設より半分に抑えられます。

リチウム価格は2022年以前の水準に戻りつつあり、Modo Energyの中央予測では今後さらに低下すると見込まれています。バッテリー所有者はCapex低下を活かしてサイト増設を検討する動きも。

2023年は周波数応答サービスがバッテリー収益の半分以上を占めていましたが、これらはエネルギー量よりも出力に基づいて報酬が支払われるため、容量を1時間追加しても収益増は23%にとどまりました。

しかし、バッテリーの設備投資コストが下がり、エネルギー取引市場への参入も拡大。現在は収益構成の約半分を占めるようになり、1時間システムの増設コストが新設の半分となっています。

プロジェクト増設のリターンや実務面についてはこちらの記事をご覧ください。

T-4 2028/29オークションでバッテリーが価格に大きな影響を及ぼす可能性

T-4 2028/29キャパシティマーケットオークションには、目標を4.7GW上回る48.7GWのデレート済み容量が予備資格を取得しました。

このうち6.6GWは条件付き予備資格で、参加にはクレジットカバーや関連許可証の提出など特定条件の履行が必要です。

バッテリーは条件付き予備資格容量の55%を占めています。過去の傾向では条件付き予備資格を得たバッテリーの44%が実際にオークションに参加しており、もし資格取得に至らない場合は供給余力が減少し、価格上昇につながる可能性があります。

バッテリー接続容量は14GW(デレート済みで4.1GW)が予備資格を取得。

NESOによるバッテリー蓄電のデレーティング係数見直しで、T-4 2028/29では35%上昇。これにより過去最高のデレート済み容量が予備資格を取得し、前年の2倍となりました。

記事はこちらで、全技術・バッテリーの予備資格状況や価格への影響をご覧いただけます。

T-1 2025/26キャパシティマーケット予備資格容量は目標を3.3GW上回る

T-1 2025/26キャパシティマーケットの予備資格審査では、9.8GWのデレート済み容量がオークション資格を取得し、NESO目標を3.3GW上回りました。このうち1.3GWは条件付き予備資格です。

たとえこれらがオークションから外れても、2GWの余剰が残ります。T-1オークション価格は2022/23年度以降下落傾向で、この余剰が低価格を示唆しています。

予備資格状況や価格への影響はこちらの記事で解説しています。

2024年のバッテリー収益構造が変化

2024年はイギリスのバッテリー蓄電収益にとって転換期でした。バッテリーは周波数応答への依存を減らし、卸取引やバランシングメカニズムといった高エネルギーサービスへ移行しました。

新サービス・市場プロセス・政策も導入され、市場のシステム数・所有者・運営者も増加しました。

2024年の特徴は、風力発電と収益の連動です。バッテリー収益は卸電力価格とそのスプレッドに左右され、風力の変動が重要な要素となりました。

2024年を通じて、バランシングメカニズムでのバッテリー出力量は月平均15%増加。サービス内での優先出力量も増え、12月には記録的な出力量・収益となりました。

その他の注目点:

  • 2時間システムが建設の主流に
  • Gresham Houseによる増設事例やOctopusとの独自トーリング契約
  • 「バランシングリザーブ」「クイックリザーブ」の新サービス導入
  • 新たなシステム・所有者・運営者・戦略の登場

2024年を形作ったプロジェクト・所有者・市場動向・戦略や、2025年の展望はこちらの総括記事でご覧いただけます。

世界のバッテリー市場の変革

世界のバッテリー蓄電市場は急速に変化しています。リチウム価格の変動によるセル価格の下落で、中国などで生産が急増。しかし米国メーカーへの関税導入の動きなど、グローバルなサプライチェーンと国内生産のバランス調整が課題となっています。

こうした状況やリチウム以外の新技術の台頭を踏まえ、今後の蓄電コストや需要はどうなるのでしょうか。

Rho Motionリサーチ部門長のアイオラ・ヒューズ氏がエド・ポーターとセル価格急落とバッテリー品質階層化の影響について語ります。

他にもポッドキャストでは、以下のトピックを取り上げています: