28 August 2024

2024年8月のマイナス価格:バッテリーはどう対応したか?

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2024年8月のマイナス価格:バッテリーはどう対応したか?

8月21日、イギリスのバッテリー蓄電システム(BESS)は、2024年で2番目に高い日次収益を記録しました:£250/MW。これは、4月16日の£258/MWにわずかに及びません。この収益増加は、8月に入ってから累計49時間ものマイナス価格が発生したことと同時に起こりました。

では、なぜマイナス価格が増加し、バッテリー収益が上昇したのか、そしてバッテリーはこうした状況下でどのように運用されたのでしょうか?

8月下旬の7日間で34時間のマイナス価格

8月のデイアヘッド卸電力価格は、合計49時間マイナスとなりました。4月(53時間)に次ぐ多さで、8月はあと3日を残しています。このうち34時間は、8月20日から26日までの7日間に集中しました。

これにより、イギリス全体でマイナス価格の卸電力時間は累計147時間となりました。これは2023年の合計より44時間多く、予測である188時間を上回るペースです。

風力発電の増加と需要減少がマイナス価格の要因

8月20日から26日の7日間、風力発電の平均は9.8GWとなり、4月以来の高水準でした。これは国内需要の平均41%を賄う量であり、夏を通じて需要が減少した結果、週の平均需要は24GWまで低下しました。この2つの要因が重なり、風力発電と需要の差が縮まったタイミングで34時間ものマイナス価格が発生しました。これは2024年で1週間あたり最多の記録です。

これは4月の2週間で計53時間のマイナス価格が発生したケースと比較できます。4月3日から16日の間、風力発電の平均は11.5GWで、国内需要(平均27GW)の40%以上を賄うことができました。

8月20日から26日のBESS収益は年換算£77,000/MW

マイナス価格の期間増加により、8月下旬のバッテリー収益も上昇しました。卸価格の最低値が下がったことで価格差が広がり、卸市場収益や周波数応答価格も上昇しました。

8月20日週の周波数応答収益は平均£65/MW/日(年換算£23,000/MW)で、8月の他の期間の3倍に達しました。これにより、週を通してバッテリーは平均で年換算£77,000/MWを稼ぎました。単日収益のピークは8月21日で、今年2番目の高水準となりました。

バランシング・メカニズムのオファーがバッテリー収益を押し上げ

オフピーク時の卸価格が低く、またはマイナスとなったことで、8月21日はバッテリーが安価に充電できました。午前に£69/MWh、夕方に£87/MWhの価格ピークがあり、卸取引だけで平均£94/MWの収益を得ました。

しかし、8月21日は価格の動きが有利だったにもかかわらず、実は8月19日の方が卸市場収益は高くなりました。21日の総収益がより高かったのは、周波数応答価格の上昇と、バランシング・メカニズムでESOがバッテリーから電力を購入したことが要因です。

バッテリーは午後1時にバランシング・メカニズムを通じて600MW超の電力を供給しました。これにより、バッテリーは日中3回目の収益機会を得て、卸市場や周波数応答の収益に加え、バランシング・メカニズムから£47/MWを獲得しました。

風力発電だけでなく、国内需要も重要

最近では、バッテリー収益は風力発電量と強く関連していますが、国内需要も収益を左右する重要な要素です。マイナス価格がバッテリーに高収益のチャンスをもたらす場合もありますが、必ずしもそうとは限りません。8月25日は1日で15時間、4月6日も同じく15時間マイナス価格となりましたが、これらの日のバッテリー収益は£205/MWと£186/MWで、8月21日や4月16日と比べて20〜25%低い水準でした。

これは、その日の卸価格の動きが国内需要(風力や太陽光発電を差し引いた需要)に左右されたためです。

4月6日と8月25日は朝の需要が低く、午前中の価格ピークがありませんでした。一方、高収益となった日には2度の明確な価格ピークがあり、バッテリーにより多くの収益機会をもたらしました。

9月・10月の「ショルダーシーズン」に入ると、需要ピークが再び増加し始めます。これはバッテリーにとって好材料となる可能性があります。つまり、オフピーク時に風力・太陽光発電が十分な需要を満たして価格が下がりつつも、ピーク時にはCCGTのような高コスト発電が必要となる「ゴルディロックスゾーン」に入る機会が増えるかもしれません。