WEMベンチマーク技術、2029-30年からガスへの切り替えの可能性
ガスは現在、WEMベンチマーク技術レビューにおいて最も低コストの選択肢となっています。現行の手法では、容量価格を決定する技術が2029-30年からバッテリーからガスへと切り替わる可能性があります。
ESR持続時間要件が6時間から7時間に引き上げられたことで、コスト差が拡大しました。バッテリーのコストは持続時間とともに上昇しますが、ガスタービンの固定費用はベンチマークテストではほぼ変わりません。
ガスがベンチマークとなると、ベンチマーク予備容量価格(BRCP)が下がり、新設バッテリーの将来的な容量収入も減少します。
2028-29年のBRCPは、6時間バッテリーを基準にして$488.5k/MW/年で既に固定されています。2029-30年以降は、どの技術をベンチマークとするかがより重要になります。
容量収入はWEMの蓄電ビジネスの基盤となっており、とくに商業収入が弱い月には重要です。ベンチマークが下がると、エネルギーやFCESS、契約による収益で投資回収を補う必要が高まります。
本記事では、ベンチマーク技術レビューがWEMの容量価格にどのような影響を与えるか、ガスがベンチマークとなった場合のバッテリー収入、そしてなぜ調達が蓄電よりも発電へとシフトしているのかを解説します。
要約
- 2029-30年からWEMベンチマーク技術がバッテリーからガスへ切り替わる可能性。 現在の手法では、新設バッテリーの容量価格が下がります。
- 7時間ESR要件により、コスト比較はさらにガス有利に。 バッテリーのコストは持続時間で上昇し、ガスタービンの固定費はベンチマークテストでほぼ不変です。
- BRCPが下がると、WEMバッテリーの収益基盤が縮小。 新設バッテリーはエネルギー、FCESS、契約からより多くの価値を得る必要があります。
- 現行手法ではガスは7時間バッテリーより26%安価。 ベンチマークテストはMWあたりの固定コストのみで、排出量は考慮されていません。
- CIS入札11は発電調達へシフト。 この入札は独立した蓄電ではなく、1.8GWの再生可能発電を目指しています。
容量収入だけでは資金ギャップが残る
RCM収入はWEMバッテリービジネスの基盤です。商業市場が弱い時期に容量を支え、エネルギーやFCESS収入への依存を減らします。
2026年7月には、このサポートが収益構造を支えました。グリッド規模のバッテリー収益は$38k/MW/年で、RCM支払いが総収入の115%を占め、商業収益は-$6k/MW/年まで下落しました。
BRCPが下がれば、新設バッテリーのファイナンスにも直結します。容量収入が収益の基盤となり、残りはエネルギー、FCESS、契約で補う必要があります。
7時間バッテリーは、年間化した設備投資・固定運用費をカバーするために$517k/MW/年が必要です。高容量価格シナリオでも、資産寿命を通じて収入不足が残ります。
7時間要件がベンチマークのコスト比較を変える
ガスへの切り替えが検討されているのは、蓄電要件が変更されたためです。2026年のWEM ESOOでESR持続時間要件が6時間から7時間に引き上げられ、バッテリーベンチマークのコストが変わりました。
バッテリーのコストは持続時間に比例して増加します。7時間バッテリーは6時間よりも多くのセル、蓄電量、初期投資が必要です。ガスタービンのコストはMWあたりの固定費用に基づくため、ほぼ変わりません。
実際の運用フリートは平均して7時間フル放電していません。2025年8月から2026年7月まで、WEMバッテリーは主に夕方ピーク時に放電し、ESR持続時間要件の終了前に出力が減少しました。
これによりバッテリーのコスト比較が難しくなります。現行手法では、より低コストのベンチマークはバッテリーではなくガスタービンです。
現行手法ではガスが26%安価
ベンチマークは、MWあたりの年間化した固定コストが最も低いものが選ばれます。資本費用と固定運用費は含まれますが、排出量やエネルギー市場での運用は考慮されていません。
この手法では、ガスを主燃料としディスティレートをバックアップ燃料とするEクラスガスタービンが最も安価です。Energy Policy WA(EPWA)は$345k/MW/年と算出しており、7時間バッテリーの$467k/MW/年より26%低い水準です。
ERAのWA向けコスト基準を用いると絶対値は高くなりますが、関係性は同様です。ガスのベンチマークは$398k/MW/年、7時間バッテリーは$517k/MW/年です。
燃料供給がガスのコストを左右します。大規模な接続を持つファームドガス構成は高価ですが、ディスティレートバックアップ方式は固定費を抑えます。バッテリーの持続時間が1時間増えるごとに蓄電コストが増えるため、7時間要件はバッテリーベンチマークの優位性を弱めます。
市場が長期化するとRCPはさらに下落
ガスがベンチマークになればBRCPは下がりますが、市場に必要以上の容量がある場合も予備容量価格は低下します。需要曲線により、割り当てられた容量クレジットが要件を超えると、BRCPに割引が適用されます。
この効果は、再生可能発電や蓄電、CIS支援容量が市場に参入するにつれて拡大します。2028-29年には容量クレジットが要件を上回り、その後10年で余剰幅がさらに拡大します。
容量が十分に供給されている市場では、RCPはBRCPを下回ります。ガスがベンチマークとなれば、ベンチマークコストの低下と余剰による割引の両方が同時にWEMに作用します。
CIS入札11は再生可能発電を重視
最新のCIS入札は、WEMにおける調達の優先順位が変化していることを示しています。これまでのラウンドでは蓄電やハイブリッド案件が支援されてきましたが、入札11では独立した蓄電容量ではなく、蓄電でファーミング可能な再生可能発電が重視されています。
入札2では、2025年3月に654MW/2.6GWhのディスパッチ可能な蓄電が落札されました。入札5・6では、2026年5月に新規風力・太陽光1.9GWと蓄電482MW/3.7GWhが落札されています。
入札11は1.8GWの再生可能発電を調達対象としています。入札は2026年8月27日に開始、10月22日に締切、2027年3月に落札が発表される予定です。
調達の方向性はエネルギー供給へと移行しています。蓄電は発電のファーミング役割を担いますが、独立した容量ギャップはもはやCISの主なターゲットではありません。
ベンチマークの決定はまだ未定
ガスへの切り替えはまだ提案段階です。今後、協議を経て最終決定されるため、2029-30年のベンチマーク技術はまだ確定していません。
結果を左右する要素はいくつか残っています。最終的なガスベンチマークコストは未公表であり、手法に排出量を明示的に含める可能性もあり、最終的にガスかバッテリーかの判断はコーディネーターが行います。
方向性は数字よりも明確です。7時間要件でバッテリーベンチマークの優位性は低下し、CIS調達も再生可能発電重視にシフトしています。いずれも、バッテリー投資にはエネルギー、FCESS、契約からの収益増が必要であることを示唆しています。
投資家にとって、ベンチマークの決定はギャップの大きさを変えますが、ギャップそのものを解消するものではありません。容量収入はWEMバッテリーの中心ですが、それだけでは事業成立には不十分です。





