26 June 2025

スペインでガス発電所が電力価格を決定する仕組み

Written by:
Modo Energy

スペインでガス発電所が電力価格を決定する仕組み

2024年、スペインの電力市場は歴史的な節目を迎えました。発電量の59%が再生可能エネルギー由来となったのです。

複合サイクルガスタービン(CCGT)は、総発電量のわずか16%しか占めていませんが、ピーク需要時には依然として最高の限界価格を設定し続けています。これは、再生可能エネルギーが成功を収めているスペインのエネルギー転換を象徴しつつも、化石燃料のコストが卸売価格を左右している現状を示しています。

本分析では、再生可能エネルギーが主流となったスペインの電力システムでガス発電所がどのように運用されているのか、なぜ依然として価格決定権を持つのか、そしてそれがピーク価格や蓄電池ビジネスにどのような影響を与えるのかを解説します。

主なポイント

  • スペインの26GWのCCGTは、全時間のうちわずか7%で価格を決定していますが、その際の平均クリア価格は€142/MWhです。
  • 技術的制約コストは2025年5月に€4億へ増加(前月比+100%)。これは主に、4月28日の大規模停電後にTSOがCCGTの稼働を増やしたためです。
  • 停電後、系統安定化のためにCCGTの稼働が増加。2025年5月は前月比で技術的制約による稼働が1TWh増加しました。
  • 2024年以降、600時間以上のゼロまたはマイナス価格が発生し、蓄電池によるアービトラージ機会が生まれています。

1. 限界供給の経済学

CCGTは限界費用で入札します。市場価格が限界費用を上回れば発電し、利益を得ます。限界費用はガス価格、CO2排出権価格、運転・保守費用で構成されます。

このグラフから、需要が十分に高いときにCCGTが卸売市場でクリアし、電力価格が€110/MWhを超えていることが分かります。日中は需要が増えても太陽光発電の供給がそれ以上に増えるため、ガス発電はシステムから外れます。

2. 再エネ時代のCCGTモデル

スペインとポルトガルの市場運営者はOMIEです。スペインの卸売電力市場は、OMIEが運営する限界費用クリア方式で運用されています。風力や太陽光などの再生可能エネルギーは限界費用ゼロで入札しますが、高いシステム価格を設定することはほとんどありません。ガス発電所や一部の水力発電は、市場で最も高い価格で入札を行います。

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