07 August 2024

Penso Power、Shellとトーリング契約を締結:その価値はいくらか?

Written by:
Modo Energy

Penso Power、Shellとトーリング契約を締結:その価値はいくらか?

8月6日、BW ESSとPenso Power(オーナー)は、ハンプシャー州ブラムリーで建設中の100MW・330MWhバッテリーについて、Shell Energy(オプティマイザー)と7年間のトーリング契約を締結したと発表しました。このバッテリーは2024年第4四半期に稼働開始予定です。

この契約は、6月に発表されたGresham HouseとOctopus Energyによる2年間のトーリング契約に続くものです。この契約は、ポートフォリオの約半分に対して、平均1.6時間の稼働で、£57k/MW/年と推定されています。

では、完成すれば英国で最長の大規模バッテリー(3.3時間)となるPenso PowerとShellのトールは、どれほどの水準になるのでしょうか。本記事では、プロジェクトの経済性や収益予測に基づき、このトールがどのようなものになるかを推定します。

トーリング契約の価格設定で考慮すべき要素は?

  • トールの価格 - オーナー側の視点では、資産のリターンを確保するための安定収入を得つつ、将来的な上振れの機会損失を抑えるバランスが重要です。オプティマイザー側では、予想収益に対して実際の収益が下回るリスクと、上回る可能性のバランスを取る必要があります。
  • トール期間の長さは、バッテリーがマーケットでどれだけ収益を上げられるかを左右します。現在の市場環境では、短期契約は低価格で設定されがちです。一方、長期契約はカウンターパーティリスク(契約不履行リスク)が高まります。
  • サイクル制限・メンテナンス契約 - トーリング契約には、バッテリーのサイクル回数制限や、メンテナンス責任・稼働率目標などが盛り込まれます。

キャパシティマーケットとTNUoSを除外した場合、£75k/MW/年のトールがオーナーに十分なリターンをもたらす可能性

標準的なトーリング契約のもと、Penso Powerは7年間、バッテリーをShellに一定のトールでリースする形となります。Shellはこのトールと実際の収益の差額で利益を得ます。

想定CAPEX £900k/MW、プロジェクト初年度から7年間の収益が£108k/MW/年の場合、無借入IRRは25年間で10%となります。キャパシティマーケットとTNUoS収益はPenso側に残ると仮定すれば、£75k/MW/年のトールで十分なリターンが得られる計算です。

この水準であればShellにも上振れの可能性があります。Modo Energyの中央予測シナリオでは、マーチャント収益は£96k/MW/年と見込まれています。つまりShellはこの場合、£21k/MW/年(最適化手数料22%相当)のスプレッドを得られる計算です。

実際のトール水準はより広い範囲となる可能性も

£60k~£90k/MW/年のトールであれば、それぞれ9%~11%の無借入IRRが期待できます。ただし、下限ではPenso側が価値を手放しすぎと感じる可能性が高く、上限ではShell側がリスクに見合ったリターンが得られないと感じるでしょう。

これらのバランスを考慮すると、£70k~£80k/MW/年の範囲でトールが決まる可能性が高いと予想されます。

Penso Powerにとってのメリットは、7年間の長期契約により契約収益比率が大幅に高まり、プロジェクトのデットファイナンス調達が容易になる点です。これにより資金を他プロジェクトに再投資しやすくなり、より高いリターンを狙うことも可能となります。

£75k/MW/年達成には現状から26%の収益増が必要

トーリング契約では、収益リスクがPensoからShellに移転します。Shellは収益がトール水準を上回った場合のみ利益を得られます。£75k/MW/年のトールを想定する場合、現状比26%の収益増が必要です。

このことは、トールプロバイダーが負うリスクを示しています。現状から収益が伸びなければトール水準に届かず、さらに上回って初めてリターンが得られます。低位予測シナリオでは収益はわずかに増加し£63k/MW/年となり、Shellはこの契約で損失を被ることになります。

全体として、このトーリング契約はBESSプロジェクトにおけるリスク分担の変化を示唆しています。Penso Powerがデット調達のためにトーリング契約を結ぶ場合、運用中プロジェクトから資金を引き出し、他事業への再投資が可能になります。一方Shellはトレーディングの専門性を活かし、市場リスクを引き受ける形となります。


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